第7回 玉川上水小金井周辺流域で9月に見られる野草の花

9月も下旬になり、過ごしやすい季節になってきました。観察できる花も少しずつ変わり、秋の装いに転じつつあります。

 

伐採区域の柵内では、2m近い高さになるアキノノゲシが咲きはじめます。伐採により地面が乾燥したためか、これまで見られなかったヤクシソウが高さ1mほどに育ち、黄色い小さな花をいっせいに開きました。夏に見られていたツリガネニンジンやワレモコウ、ユウガギク、ヤマハギ、ススキはまだまだ見られます。足元ではピンク色の花穂をつけたツルボが群落をつくり、所々でヒガンバナが大きな赤い花を魅せています。初夏に目立たない小さな花を付けたノブドウやエビヅルには、この時期たくさんの実がなります。

 

柵の中にクズやセンニンソウが所せましと繁茂し、柵やサクラの木にびっしりと絡みついている様子は、昨今の小金井の風物詩と言えるでしょうか。クズは大きな枝豆のような実をたくさんつけ、センニンソウはここぞとばかりに白い花をびっしりと咲かせます。

 

これらの草花は伐採を免れた雑木林区域でも見られますが、樹木が多く残る雑木林区域では、花のみならず木の実にも注目したいところです。クヌギやクリの実が大きく膨らみ、マユミやイイギリ、クロガネモチの実も色づいてきました。クサギは、すでに鮮やかな青い実をあらわにしているものが多いようです。来月には明るい紫色のムラサキシキブの実も見られることでしょう。

 

季節の変化とともに、植物の姿も変わっていきます。この間咲いていたあの花はどうなっただろう。この実はこれからどうなるのだろう。そう考えながら観察するのも楽しいですね。

 

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それぞれの花について

アキノノゲシの花
アキノノゲシの花

アキノノゲシ

秋の野にひときわ高く伸びる植物です。人の背丈を優に超え、2m近くに成長します。先端に淡い色のタンポポに似た花を付けます。春から夏に見られるノゲシより優しい色合いです。

 


エビヅルの花
エビヅルの花
エビヅルの実
エビヅルの実
ノブドウの花
ノブドウの花
ノブドウの実(正常)
ノブドウの実(正常)
ノブドウの実(虫入り)
ノブドウの実(虫入り)

エビヅルとノブドウ

6月から8月にかけて小さく目立たない花が咲き、9月ごろに実が色づきます。エビヅルはワインのブドウのように濃い紫色の甘い実がなります。ノブドウは紫色や藍色や空色といったカラフルで美しい実をつけますが、色のついた実は中に虫が入っているため食べない方が良いそうです。

 


クズの群落(柵の外側)
クズの群落(柵の外側)
クズの群落(柵の内側)
クズの群落(柵の内側)
クズの実
クズの実

クズ

伐採区域では柵の中や樹木を覆うほどに繁茂しており、その生命力の強さに驚かされます。紫色の大きな花を咲かせ、その後に枝豆のような実をつけます。


センニンソウの群落
センニンソウの群落
センニンソウの実
センニンソウの実

センニンソウ

柵にびっしりと絡みつき、白い花をたくさん咲かせます。花が終われば仙人のヒゲを思わせる実をつけます。

 


ツルボの花
ツルボの花

ツルボ

日当りのよい野を好む植物です。薄紫色の可愛らしい花穂をつけます。時に、人工的に植えたのかなと思わせるような美しい群落をつくります。

 


ヒガンバナの花
ヒガンバナの花

ヒガンバナ

秋のお彼岸の頃に朱色の大きな花が咲き、花が終わると葉が出てきます。もともとは中国大陸原産であり、日本のヒガンバナは三倍体であるため種をつくることができず、球根によって増えるのだそうです。ヒガンバナに似た仲間にキツネノカミソリがあります。

 


ヤクシソウの花
ヤクシソウの花

ヤクシソウ

日当りを好む、乾燥に強い山野の植物です。鮮やかな黄色の花をいっせいに咲かせます。伐採後に乾燥のせいか、ここ数年で急速に増えているように感じられます。

 


ヤマハギの花
ヤマハギの花

ヤマハギ

山野で見られる落葉低木で、秋の七草のひとつです。夏にも紫色の花をいっぱいに咲かせいたため、7-8月の記事でも紹介しています。